酸化剤と還元剤

【酸化剤・還元剤とそのはたらき】

酸化剤は化学反応において,反応する相手を酸化する(電子を奪う)物質のこという。そのとき,酸化剤自身は電子を受け取っているので還元される(酸化数が減少)。一方,還元剤は化学反応において,反応する相手を還元する(電子を与える)物質のことをいう。そのとき,還元剤自身は電子を失っているので酸化される(酸化数が増加)。

例)Cu + Cl2 → CuCl2                                     

  Cuの酸化数:0 → +2 ⇒ 〔 酸化 〕されている(〔 Cl2 〕が酸化した)

  Cl の酸化数:0 → −1 ⇒ 〔 還元 〕されている(〔 Cu 〕が還元した)

   Cuが〔 還元剤 〕,Cl2が〔 酸化剤 〕    

 

酸化剤,還元剤の反応を別々に表した反応式を半反応式という。上のCuCl2の反応を例にすると,次のようになる。

  酸化剤:〔 Cl2 2e 2Cl 〕     還元剤:〔 Cu Cu2 2e 〕

 

【酸化還元反応のつくり方】

酸化還元反応式は,酸化剤と還元剤の半反応式を合わせることによってつくることができるので,次の表にある半反応式はいつでも書けるようにしておく必要がある。それぞれの半反応式の黒字の変化,ニクロム酸カリウムなら,Cr2O722Cr3を覚えておき,〔  〕に入るHeH2Oは次の「半反応式の作り方」の通りに入れられるようにする。また,半反応式では,酸化・還元に関係するものだけを示すので,関係ないものは省略される。ニクロム酸カリウムなら,Kが省略されている。

 
 
1)過酸化水素は通常は酸化剤として働くが,過マンガン酸カリウムなどの強い酸化剤と反応するときは還元剤として働く。
2)二酸化硫黄は通常は還元剤として働くが,硫化水素などの強い還元剤と反応するときは酸化剤として働く。

 

酸化剤の半反応式のつくり方

例)二酸化硫黄 ・・・ 〔 SO2 → S 〕を覚えておく。                   

 (@)OH原子以外の原子の数を合わせる ・・・〔 SO2 → S 〕(この場合はこのまま)  

(A)両辺のO原子の数を合わせる ・・・ 〔 H2O 〕で合わせる。〔 SO2 → S + 2H2O 〕

(B)両辺のH原子の数を合わせる ・・・ 〔 H 〕で合わせる。〔 SO2 + 4H → S + 2H2O 〕 

(C)両辺の電荷を合わせる ・・・〔 e 〕で合わせる。〔 SO2 + 4H + 4e → S + 2H2O 〕・・・@

 

還元剤の半反応式のつくり方 ・・・ つくり方は酸化剤と同じ。

 例)硫化水素 ・・・〔 H2S → S 〕を覚えておく。 

  (@)〔 H2S → S 〕  (A)〔 H2S → S 〕

  (B)〔 H2S → S + 2H 〕  (C)〔 H2S → S + 2H + 2e 〕・・・ A

 

酸化還元反応のつくり方

酸化剤の半反応式と還元剤の半反応式を何倍かして加え,電子が消去されるようにする。上の二酸化硫黄と硫化水素との酸化還元反応は下のようになる。

 

例題

酸化剤と還元剤の半反応式つくり,それを合わせて,酸化還元反応をイオン反応式で書け。

1)硫酸酸性の過マンガン酸カリウム水溶液に二酸化硫黄を反応させる

2)硫酸酸性の過マンガン酸カリウム水溶液に過酸化水素水を反応させる。

 

「硫酸酸性」は,結果的に反応式に出てくるH+のことを言っている。反応式をつくるときには,気にしなくてよい。

(1) 酸化剤 MnO4 + 8H + 5e → Mn2 + 4H2O … @

還元剤 SO2 + 2H2O → SO42 + 4H + 2e … A

eが消えるように,@×2+A×5より,

2MnO4 + 5SO2 + 2H2O → 2Mn2 + 5SO42 + 4H 

 

(2)  酸化剤 MnO4 + 8H + 5e → Mn2 + 4H2O … @

還元剤 H2O2 → O2 + 2H + 2e … A 

(過マンガン酸カリウムが強い酸化剤なので,過酸化水素は還元剤になる)

eが消えるように,@×2+A×5より,

2MnO4 + 5H2O2 + 6H  → 2Mn2 + 5O2 + 8H2O

 

【酸化還元滴定】

酸化剤または還元剤の標準液(濃度既知の溶液)を用いて,還元剤または酸化剤の水溶液の濃度を滴定によって求める操作を酸化還元滴定という。このとき,「酸化剤が受け取る電子の物質量〔mol〕=還元剤が失う電子の物質量〔mol〕」が成立する。

酸化還元滴定は,中和滴定と同じ器具を用いて行う。このとき用いる酸化剤は色の変化を伴うので,指示薬は不要である。例)MnO4(赤紫)→Mn2(無色)


例題 
0.10mol/Lのシュウ酸水溶液20mLを硫酸酸性とし,過マンガン酸カリウム水溶液を加え,過不足なく反応するのに40mL要した。過マンガン酸カリウム水溶液のモル濃度を求めよ。答は有効数字2桁で答えよ。

   過マンガン酸カリウム MnO4 + 8H + 5e → Mn2 + 4H2O ・・・ @ 

   シュウ酸       H2C2O4 → 2CO2 + 2H + 2e ・・・ A

 

 @×2+A×5より酸化還元のイオン反応式になる。つまり,過マンガン酸カリウム2molとシュウ酸5molの割合で反応する。いま,シュウ酸は0.10mol/L20L(=0.020L)なので,0.10×0.0202.0×103molある。過マンガン酸カリウムはx mol/L40mL(=0.040L)なので,x ×0.040molある。これが2:5なので,比例式で25x ×0.0402.0×103が成り立つ。x0.020mol/L